2010/02/24

しかたがないんじゃないか。


下はキム・ヨナと浅田真央のプロトコル


いろいろといわれてますけど、
男子のことがあるので、私の中では想定の範囲内です。
約5点差なので、逆転は不可能ではないと思います。

おそらくジャッジとしては、キムには勝たせたい。
しかし、浅田真央にもチャンスは与える。
キムはFPがデフォだから、できるだけSPで点数を与えて、
FPをやらせて、合計点の僅差でどちらか上のほうを金にする。
男子のFPを考えると、たぶんそうだと思います。
キム陣営だとて浅田真央が5点差まで
詰め寄るとは考えてなかったと思います。

下にも書きましたが、
もともと浅田真央が3Aを成功させることを
前提に考えていない様に感じます。
約10点差。
これが、彼らが考えていたシナリオです。
SPで圧倒的差をつけて、
FPではジャンプをミスっても余裕で金メダル。

またジャッジも同じことを考えていたと思います。
浅田真央がここまでやるとは思わなかった。
だから、しかたがなく点をあげた。
キム・ヨナの点数が高くなったのは、
浅田真央に高い点数をあげざるを得なくなったので、
調整のためにキムのほうを高くしてしまっただけです。

去年の世界選手権を想定していたんでしょうが・・・
SP逃げ切りが上手くいくかどうか・・・

でも、上手くいくと思います。
ジャッジの意思は『キム・ヨナを勝たせること』です。
意地でもそうすると思います。
システムは自分の誤りを認めたくないものです。
キムを勝たせなければ、
ジャッジは自分たちの誤りを認めることになります。
彼女は新採点システムの『象徴』。
彼女を勝たせることで、
自分たちの正当性をさらに強めようとするでしょう。

そこに浅田真央がどこまで食い込めるか。
プルシェンコは辛くも負けましたが、
浅田真央には彼にはない武器がある。
それは、『若さ』。
いまだ伸び盛りの彼女がどこまでやるのか。
昨日のNHK特集でも言っていましたが、
高難度のジャンプと高い芸術性が両立できたとき、
結果は決まると思います。

でも、まあ、今日はショックも何もなかったな。
やはり結果はやる前から決まっていた。それだけです。


ブライアン・オーサーの悪夢~彼がそれでも負けるわけ



まずはじめに。
ぐーるどさん、情報ありがとうございます。

私も某掲示板を見て知りました。

http://www.news24.jp/articles/2010/02/23/10154073.html

しかし、あまり賛同はしません。
もちろんプルの気持ちも分かるし、抗議自体は悪くはないと思いますけど、
だけれども、もしそれで金メダルとかいうことになれば、
2002年のソルトレークの再現になってしまうのでは?、と危惧します。
彼にはサレペルのようにはなってもらいたくないです。
いくら理不尽な結果でも、結果は結果です。
それを受け入れなければ、真の英雄とはいえないと思います。
彼には、いつまでも誇り高い人であって欲しいです。
私はいまの、あまりにも理不尽すぎる結果も含めて、彼が好きなんです。

だからといって、いまの採点システムが正常に機能しているとはいいがたいです。
彼のような影響力の強い人がそのような発言をすることで
少しでも改善につながるのであれば応援しますが。
事実彼はフィギュアのルールを変えたことがある人ですし。

ちなみにジャッジの二人がプルに異常に低い採点をつけていたのは、
記事が出る前から、こちらのサイトで知っていました。

本当にひどいですよね。でも、北米開催のOPではどうしようもないと思います。
NYtimesでも、『興行的な理由で、北米出身のチャンピオンが必要だった』
とはっきりと書いているほどですから。
もともとプルに勝たせる気などなかったのです。


☆゚+。☆。+゚☆゚+。☆。+゚☆

今日2つの番組を見ました。
ひとつは、報道ステーション、もうひとつはNHK特集。
後者の番組は今見ているというか、見ながら書いているんですが。

報道ステーションの特集はひじょうに興味深く見ました。
特にブライアン・オーサーのインタヴューがよかった。

いまのオーサーはまさにキム・ヨナを使って
22年前の雪辱を果たそうとしているんですね。
自らの敗因を、プログラムの変更にあるとして、
キム・ヨナにはプログラムの変更はさせないというのは
ある意味賢明かと思います。
この理不尽な採点システムの下では、
無謀な試みは逆に足元をすくわれかねないですから。

しかし、一方で、オーサーはなぜ22年前にボイタノに
勝てなかったのかもよく分かりました。
おそらく今回でも勝てないでしょう。
なぜなら、オーサーはある可能性をまったく考慮していないからです。
オーサーは22年前のOPで銀メダルに終わったのは、
トリプルアクセルをフリップに変えて、トリプルアクセルを1回にしたからだといいました。
しかし、仮にプログラムを変更しなかったとして、
オーサーはボイタノに勝つことができたでしょうか。
ここに彼の隙があると思います。

私は、オーサーがプログラムを変更しなくてもボイタノには勝てなかったと思います。
どうしてか? それはボイタノが天才だったからです。

天才がなぜすごいのか。
それはまったく『読めない』からです。
いつどんな風に化けるのかまったく予測不可能なんです。
オーサーはボイタノの天才性にまったく気づけなかった。
いや、気づいていたのかもしれないですが、
心のなかで認めたくはなかったのでしょう。

田村明子さんの『氷上の光と影』という本に、
ボイタノがいかにジャンプの天才だったかが述べらています。

-ボイタノは自分がジャンプを飛ぶために、
フェンスからどのくらいの距離が必要か正確にはかることができるのに驚いた。

ボイタノはまるで数学のように正確に頭の中で
シュミレーションすることができるという稀有な才能の持ち主だったのです。

おそらくボイタノはオーサーのトリプルアクセルを見て、
自分もプログラムに2回入れられるだろうと思ったのでしょう。

天才というのはえてしてそのようなものです。
プルシェンコも浅田真央もおそろしいほど
簡単に難しいことをやってのけてしまう。
それはなぜでしょうか。
天才にはつねに『万能感』があるからです。
もちろん『万能感』は誰にでもあります。特に子供の頃はみな誰しも持っているものです。
しかし、大人になるにつれ自分の限界が分かるようになり、万能感が薄れていく。
ですが、天才たちは大人になってもこの万能感を持ち続けている。
そして、ここが何よりも重要なのですが、
天才が真にその力を発揮するのは、
その万能感が実際に達成されてしまうところなんです。

プルシェンコも浅田真央も、常人には及びもつかないことを考えます。
プルシェンコは、OPの前しきりに3A-4Tを練習していました。
個人的には、この馬鹿みたいな試みがプルを
金メダルから遠ざけた原因のひとつだと思ってますが、
一方で、あともう一歩というところで成功しそうだったことも確かです。
彼は「できてしまう」んです。

また、浅田真央も同様です。
3Aでは飽き足らず、3A-2Tをやろうとする。
しかも、3A三回をプログラムに入れさえする。
今の採点制度ではそのような無謀な試みなど
却ってリスクにしかならないのに、彼女は果敢に挑戦する。
なぜなのか、やはり彼女が「天才」だからゆえです。

天才だからこそ、無謀な試みに挑戦してゆくし、
またそのような挑戦が許されるのです。
そして、その挑戦は誰にもできるものではない。
おそらくプルシェンコだけでしょう、そのようなコンビネーションを考え付くのは。

さらに、天才は時代を変える力を持っている。
4回転時ジャンプそのものを開発し、発展させたのは、
ストイコやブラウニングといった先人たちですが、
男子なら誰でも4回転を飛ばなくてはと思わせるようになったのは、
ほかならぬプルシェンコです。
プルシェンコが4回転を簡単に決めてしまうために、
他の選手たちがどうしたらプルシェンコに勝てるのかと
日々切磋琢磨したために、「4回転時代」が生まれたのです。

また、浅田真央も同様です。
彼女がトリプルアクセルを跳ぶようになった結果、
ロシアのジュニアの女の子たちが浅田真央を目指して
3Aを必死になって習得しようとしている。
これもすべてソチ五輪で、彼女を負かすためです。

しかし、キム・ヨナの3-3はどうでしょうか。
みなキム・ヨナを負かすために、3-3をやろうとしているでしょうか?
誰もしていませんよね? それどころか、リスクを恐れて難度を落とす始末。
どうしてなのでしょう? もちろんいまの採点システムが大きいと思いますが、
それだけではないと思います。
残念ながら、キム・ヨナに時代を動かす力はないのです。

ボイタノは天才ゆえに考えただけです。
オーサーができるなら自分もできる、と。
オーサーが自らの栄光に酔いしれているときに、
ボイタノは影で必死になって練習をしたのでしょう。
そして、OP本番でとうとうできてしまったのです。
まさに予測不可能なことが起きたんです。

オーサーもまさかボイタノがやってのけるとは思っていなかったでしょう。
天才に対する理解不足ゆえに起こった悲劇です。

そして、オーサーは、残念ながらその悲劇を繰り返そうとしている。
キム・ヨナのプログラムは変更しないといった。
プログラムどおりにやれば点数は付いてくると。
しかし、オーサーは浅田真央の3Aが失敗するという前提の上でしか語っていない。
彼女がプログラムを完璧に滑ったとき
どうなるのかまったく計算に入れていないのです。
もし浅田選手がSPをノーミスで滑り終えたときどうするのか、
そのフォローはまったくできていません。
たぶんキム・ヨナもそのようなことを考えていない。
これは逆にとても恐ろしいことではないか。

今日の公開練習でキム選手がしきりに浅田選手を気にする場面が見られました。
おそらく相当なプレッシャーがかかっているでしょう。
まさか彼女がここまでジャンプを戻してきているとは思わなかったでしょうから。

キム陣営の計算されつくした計画に生じた思わぬ「穴」。
これが勝敗を分けるかもしれない。

天才というのは、いつも予測不可能なものなのです。
予測不可能で、なおかつ、不思議で、そして、信じられないほどの力を発揮し、
また誰よりも魅力的だから、われわれはいつの時代も「天才」を求めるのだと思います。

ただ、私は今回の女子が正常なジャッジが下されるとは思っていません。
男子のことで思い知らされましたが、
もうすでに「金メダリスト」は決まっています。
どんなにネ申演技をしてもよほどのことがない限り、
結果が覆ることはないでしょう。

いまの採点システムは天野氏が言うとおり、
『努力をすれば凡人が天才に勝つシステム』なのです。

ですが、浅田選手や安藤・鈴木両選手にはがんばってもらいたいです。
たとえジャッジの判定が理不尽なものだったとしても、
誰の演技が本当にすばらしかったか、
人々の記憶はそう簡単に変えられるものではないから。


最後に。
私が全日本選手権の『鐘』を見た感想をここに上げて終わりにしたいと思います。




浅田選手は何かを『つかんだ』気がする。

なぜタラソワがこのプログラムを彼女に与えたのか。
まだ円熟の域にも達していない彼女に。
本来ならばクワンが滑るはずだったプログラムを。

いまならとてもよく分かる気がします。
このプログラムは魂の根源に触れることのできる者しか
滑ることができないからです。

しかし、その彼女でさえも最初の頃は苦悩した。
滑りこなせず、苦い挫折を味わった。
だけれども、その挫折はこのプログラムを完成させるためには
絶対に不可欠な過程だったと今では思います。

タラソワの『乗り越えろ』というのはまさにそういう意味だったと。

そして、ラフマニノフ自身もさまざまな挫折や苦しみを味わった人でした。
いまでは浅田選手とラフマニノフが重なって見えます。
芸術というものは、苦悩なくしては成り立たない。
二人の天才がまさに出会った最高のプログラムです。

バンクーバー、がんばってください。