2009/10/22

2009-2010シーズン到来 エリボン杯 女子FP 考察 その2




《前回からの続き》


では、次は浅田選手にまいりましょう。




なんど見てもすごいプログラムですよね。
なにもかもが荘厳で、荘重で。
見ている者を何かこう厳粛な気持ちにさせるというか。
ラフマニノフはもともとドラマティックな曲を作ることに長けた人ですが、
それにしても、ドラマティックすぎますよね。
なんといえばいいのかな、神の領域に触れたようなというか、
そういう神聖さを感じる。
そして、何よりもすごいのは、浅田選手がその音楽に負けず、
しっかり演じきっているということ。
19歳の、まだ大人にもなっていない女の子がですよ、
こういう魂の根源に触れたような表現をしているのが本当にすごくて・・・。

キム選手とは別の意味で言葉にならないというか・・・

わたしはこのプログラムが大好きなので、
変えるべきではないと思っていますが、
なかにはもっと浅田選手に似合う
華やかな曲にすべきだという人もいるようで・・・
特にカナダの人はそう思っているようですね。

でも、わたしは変えるべきではないと思う。
このプログラムは完成させたら、まさしくネ申プロになりますよ。
それに、もしオリンピックでネ申演技をしたらまさに「伝説」になると思う。
ソルトレークのヤグディンの「仮面の男」のように。
まさにタラソワ渾身のプログラムだと思います。
それほどまでにタラソワは浅田選手に全てを賭けている。

浅田選手のイメージにそぐわないというのであれば、
観客や解説者たちに文句を言わせないようにすればいいんですよ。
浅田真央は「春のお姫様」だけの選手だけではないと。
そうやって自分の実力でイメージを覆していけばいい。
そして、そうやって一辺倒のイメージでしか見れない人に
自分のほうが間違っていたといわせるようにすればいいだけです。

浅田選手はそういう実力をそなえているし、
現に少しずつではありますが、
プログラムを完成させてきているではないですか。

ステップもJOのときよりもずっと上手くなっていたし、
スピン・スパイラルも改善が見られました。
プログラム全体に流れができて、スムーズになったと感じます。

最初の3A-2Tのコンビネーションは完璧でした。
3Aの精度はすばらしいですね。
2Tをつけても危なげなく降りられるようになっている。
あとは確率を高めるだけ。試合では必ず成功させなければ。
これは今後の大きな課題だと思います。

以前も書きましたが、浅田選手の構成は少しいびつです。
アクセルに頼りすぎている。
個人的にはルッツや3F-3Tを入れてバランスを取るべきだと思いますが、
浅田選手がアクセルで行きたいと望んだそうですから、
アクセル主体の構成で行くならば、絶対に成功させなければならない。
実はここが浅田選手の現時点での弱点かと思います。
決まればすごいけれども、その分失敗も多い。
やはりプルシェンコのような絶対的な確率で跳ばなければ。

それと体力。
最後の2Aでの失敗は去年のGPFの3F失敗と重なりました。
3A2回は、今季の浅田選手を以ってしても
とてつもない体力がいるということです。
しかも、そのあとには45秒の怒涛のステップが待っている。
その体力の配分をどうするのか。
これも大きな問題です。

ジャンプの失敗は・・・、
ループに関してはかわいそうで見ていられませんでした。
単独のループはどう考えても回転不足には見えない。
あれで回転不足を取ったら、
キム選手のジャンプはもっと回転不足をとらなければならない。
ようするに今季採用されることとなった「見た目のいいジャンプへの積極評価」は
キム選手にしか適用されないということになる。
ループの厳格化は去年よりもひどくなった気がするのはわたしだけでしょうか。

これは無言の圧力ですよね、構成をキムヨナにしろという。
つまり、ルッツをいれ3F-3Tを投入しろといっているんだと思います。

ただ3F-2Lo-2Loに関しては若干の回転不足が見られました。
3Fの跳び方を変えたのでその影響かと思われます。
いっそのこと3F-2T-2Loにしたほうがいいのかもしれません。
浅田選手はセカンドジャンプにTをつけるのが苦手ですが、
アクセルにはつけれるので、2Tなら大丈夫ではないかと。

個人的にはFP・SPの両方とも構成を変えたほうがいいとは思っています。
3AはFP一回にすべきです。
浅田選手の今後の成功率にもかかってますが。
しかし、彼女へのダウングレードが(キム選手よりも)苛烈なのは、
やはり3Aを跳ぶからだと思います。
男子もそうですよね、
4回転を跳ぶ男子に対してのダウングレードが厳しいことを。
チャンのエッジエラーは見逃されても、
ジュベールのエッジエラーは見逃しません。
これは明らかに難度の高いジャンプを飛ぶ選手に対しては
厳格にジャッジするということを示唆している。
女子の浅田選手も例外ではないわけです。

ただ難度を下げたところで
キムヨナよりも高い点数が取れるのか、
という疑問がありますが

もしかしたら浅田選手はもはやバンクーバーでの
金メダルを捨てているのかもしれない。
誰かにすでに言われているのではないでしょうか。
バンクーバーでは金メダルはキムヨナに取らせるつもりでいると。
けっこうこういう話はあるようですよね。
前にも書きましたけれども。
カート・ブラウニングは選手時代、
次の世界選手権ではジャッジはペトレンコを優勝させるつもりでいるから、
負ける準備をしておきなさいといわれたことがあるそうですから。

浅田選手だってそういう話を聞かされていないとは限らない。
バンクーバーで金メダルを取れないというのであれば、
少なくとも『記録』という面では、
誰もが達成できないことをしたいと思っても不思議はないはず。
まあ、これはわたしの単なる想像ですが ( ^ω^;)

とにかく浅田選手がアクセル主体の構成で行くならば
かなりのリスクは覚悟しなければならないのは確かです。
プログラムの完成度は増してきているとはいえ、
ループなど前季では想像もつかなかった問題が発生しているのですから。

考えてみれば、安藤選手も4Sにこだわるあまり、
昨シーズンの前半は上手くいきませんでした。
しかし、4Sをあきらめて構成を下げた結果世界選手権で見事復活しました。

今のルールは全てがおかしなことばかりで、
構成を下げれば点数が高くなるという不可思議な採点システムです。

今後のロシア杯以降の点数の出方しだいでは
真剣にジャンプの構成を考え直さなければならないかもしれません。
浅田選手が本気でこの採点システムで
金メダルを取りたいと思っているのであれば、ですが。