2009/08/16

2010 バンクーバー五輪 フィギュアスケート メダル展望-明暗を分けつつある? 浅田真央とキム・ヨナ その③-



《その②からの続き》

また、セカンドの3T対策もしっかり行っているようですね。

わざわざテレビ放映させるぐらいですから、
かなりのレベルまで完成させてきているんでしょうね。

おそらく3F-3Tを考えていると思います
そして、3A-3Tも。


当初、浅田サイドはプログラムの発表を
シーズン直前前行わないと発表していましたが、
すぐさま撤回し、比較的早い段階で発表したのは、
浅田選手の調子が思った以上に良い状態にあるためだと思います。

タラソワの戦略がスムーズにいっている証拠ではないでしょうか。

テレビで浅田選手の近況を放映するのは、
他の選手にプレッシャーを与えるためです。

スポーツの世界にも情報戦というのはあるわけで、
ライバルの選手の出来を知るというのは、
相手の戦略を知る上でも重要です。
また、盛んに情報を流すことで、
相手にプレッシャーをかけることもできます。

楽天の野村監督は、けっこうこういったメディア戦略を使うそうです。

名コーチ、タラソワもそういう戦略を踏まえたうえで、
盛んに情報を流しているんだと思います。

現に浅田選手の調子は上向いていますし。


ただ、残念なのは、ルッツの場面が放映されなかったこと。
思ったよりも上手くいっていないのかもしれません。
昨シーズンは矯正できたことを盛んに流してましたが、
今年に入ってまったくないのは、
おそらくまだ人に見せられるレベルではないのではないかと。

エッジの矯正というのは、本当にむずかしいんだと思います。
おそらくどんな名コーチでも完全に矯正できないのではないか。

わたしは以前ミーシンならできるかもと書きましたが、
プルシェンコの出来具合を見ると、
あのジャンプの名コーチである彼でさえもむずかしいんだなと。

考えてみれば、エッジの矯正を大きく問題視したのは
ここ最近のことです。
確かに旧採点システムでもそれなりにエッジエラーは問題になってましたが、
eがついて減点されるなど厳密に点数に反映されることはなかった。
そのため、コーチたちもエッジエラーをそれほど気にせずに指導していた。

しかし、エッジエラーが問題視されるようになって
コーチたちはエッジの矯正を試みたが、
選手たちは思いのほか上手くいかなかった。
それどころか、ほかのジャンプの調子まで狂わせてしまう始末。

おそらくキム選手も同じではないでしょうか。
オーサーもキム選手なら簡単にエッジを矯正できると考えていたのでしょう。
しかし、思いのほか矯正が上手くいかず、それどころかルッツも危うくなっている。
キム陣営もひそかに頭を抱えているのではないでしょうか。

浅田選手もこのルッツのエッジの矯正に関しては厳しいのでしょう。


それでも、浅田選手には3Aがありますから、
ルッツが飛べなくてもさほど問題ではない。
むしろアクセルのほうが基礎点が高いのですから。

もちろんタラソワもすでに織り込み済みでしょう。
ルッツが最終的にだめでも、3Aを2回跳べばいいわけで。
すでに昨シーズンでトライしているわけですし、
DGはともかく、着氷はできていますしね。

もちろん最後までルッツの可能性は捨てないと思いますが、
最終手段として飛べないときは、3A2回でいくと。


タラソワのシナリオは、おそらく、こうです。
フランス大会で、3F-3loをやらせてDGをとられたら、
ロシア大会かGPFでセカンドを3Tに変える。

そして、3Lzが飛べなかった場合は
コンビネーションジャンプを3A-2Tに変えて、
単独の3Lzを3Fに切り替えると。

これはSP、FPも基本線は変わらないのではないかと。

サルコウはもうやらないでしょうね。
ループがあるので、わざわざやる必要もないですし。
特に点数の高いジャンプではないですから。

浅田選手の優位なところは、
難度を下げられるということ。

最終的に調子が狂いまくって
ジャンプが飛べなくなっても、2Aを3回跳べば済むことですしね。

逆に、キム選手はもう構成を下げようがないですから。
ループは飛べない。フリップもやばい。ついでに、ルッツも危うい。
これでサルコウが回転不足を取られた日には・・・。
もうどうしようもないですよね。


なんというか。
まだシーズンインまで2ヶ月ありますが、
すでに二人の選手の明暗が分かれつつあって、
すごく面白いですね。

2010 バンクーバー五輪 フィギュアスケート メダル展望-明暗を分けつつある? 浅田真央とキム・ヨナ その②-



《その①からの続き》

キム選手はエッジ対策としてコンビネーションジャンプを
フリップからルッツに変えるといっていますが、
これはあまりいいことではないような気がします。

なぜなら、キム選手はシニアに上がってほとんどといっていいほど
ジャンプの構成を変えたことがないからです。
3年間も同じ構成でやってきたものを
いきなり変えてしまうというのは、
本人の調子を逆に狂わせてしまうような気がするのです。

エッジ矯正の問題を抱えているにもかかわらず、
それに加えて、いままで慣れ親しんできた構成さえも変えなければならない。

これは思っている以上に大変なことではないかと。

それに、キム選手はそれほど器用な選手ではありませんから。

エッジの矯正というのは、思っている以上に簡単なことではないと思います。
あの浅田選手ですら、最終的にルッツを跳ぶことができなかったのですから、
浅田選手よりも不器用なキム選手が、果たして矯正をたやすくできるかどうか。

昨シーズン、キム選手のエッジエラーがさほど問題にならなかったのは、
逆に彼女を不利にしてしまったように思います。
もし2007年辺りにeがついていれば、
安藤選手のようにワンシーズン棒に振っても、
エッジの矯正ができたでしょうに。




一方の浅田選手ですが、調子ははかなりよさそうです。




まず驚いたのは、2:43辺りからの3A。
すごくきれいなジャンプ。まるでプルシェンコの3Aみたい。

いつも2Tのコンビネーションをつけるときに回転不足になりがちだった3Aが
きちんと回りきってから降りることができるようになっている!?

これは明らかに筋トレの賜物でしょうね。
浅田選手の3Aには、

①いつもツーフットで降りてきてしまう。
②どうしても、ほんの少し回転不足になってしまう。

という問題があったのですが、

これは筋力不足ということと密接な関係があって、
腹筋や背筋がきちんと鍛えられないと、
着氷したときにフリーレッグをあげられないまま、
両足で着氷してしまいがちになるそうです。

しかし、昨シーズンから筋トレを導入した結果、
筋力が鍛えられて、これらの問題点がすべて解消されました。


タラソワの戦略として、
まず第一に3Aを確実に跳べるようにするということがあったと思います。
しかし、昨シーズンまでは残念ながらジャンプの精度に問題があった。
もちろん成長期とぶつかってしまい、
ジャンプの軸がぶれてしまったということもあります。

タラソワは、その問題を筋力の不足にあると見抜き、
浅田選手のコーチになる代わりに、専属のトレーナーをつけるよう依頼しました。

また、より確実に飛ばせるために、
実際の試合でよりたくさん飛ばせる必要がありました。
タラソワは、おそらく、DGはあまり考えなかったと思います。
とにかく実際の試合に飛ばせて、きちんと着氷できるんだということを
浅田選手自身に実感させる、または、自信も持たせる。
そちらのほうが大事だと考えたように思います。

浅田選手はシニアに上がってから、
ステップからの3Aというかなり無駄な試みをしてしまった結果、
本当の3A自身も飛べなくなってしまってました。
そして、彼女自身もたぶんもう3Aは飛べないのではないかと
自信を喪失していたと思います。

しかし、タラソワはあえてひとつのプログラムで、
二つの3Aを入れるという難題を課した。
そうすることで、浅田選手の3Aへの自信を取り戻させ、
かつ、確実に飛ばせるよう仕向けたのです。

また、2回飛ぶということは、ひとつは3Aにコンビネーションをつけるということです。
そして、コンビネーションジャンプにできれば、かなりの強力な武器になります。
3A-2T、または3A-3Tは、
現役の女子選手のなかでできる人はいないのですから。
基礎点は高くなるし、決まればジャッジの印象は高くなるし、
かなりのメリットになるかと。

それらのことをすべて考えた上で、
昨シーズンは、あえて難しい内容の『仮面舞踏会』をやらせた。


タラソワという人は、フィギュア・ファンならご存知の通り、
オリンピックシーズン前は
鬼プロをやらせて選手を徹底的に鍛え上げさせることで有名です。
荒川静香さんしかり、クーリックしかり。

クーリックのオリンピック前のプログラムは本当に鬼ですよね。
イーグルからの3Aって…。プルシェンコでも見たことがないわ


これは余談なんですが、浅田選手ってクーリックに似てると思うんですよね。
浮世離れした雰囲気だけではなく、ジャンプの質とか、スケーティングのやわらかさとか。
たぶん、この二人は同じ質を持ったスケーターだと思います。

田村明子さんの『表情の光と影』という著書に、
「クーリックは神のごとくジャンプをする」と
ボイタノに解説されていたと書かれてましたが、
落下傘をつけて降りてくるかのように、ふわっと着氷するというのは、
浅田選手も同じですよね。
ふわっと羽が舞いあがるようにジャンプして降りてくる。
たぶん二人ともひざと足首が柔らかいんだと思います。
これはスケーターとしては絶対に必要なものらしく、
織田選手も奇跡のように柔らかいひざの持ち主なんだそうです。


実はタラソワが浅田選手のコーチを引き受けたのも、
そういうクーリックと似た資質を浅田選手に見出したためかと。

すでにクーリックを指導してオリンピックで金メダルに導いた実績がありますし、
似たもの同士であれば、同じ指導が可能です。

つべのこの動画にクーリックの筋トレの場面が出てくるのですが、
なぜか浅田選手の筋トレ場面を思い出してしまいました。

《ううっ、二つに分けても終わらなかった。また③へ続きます》

2010 バンクーバー五輪 フィギュアスケート メダル展望-明暗を分けつつある? 浅田真央とキム・ヨナ その①-



昨日にも更新しようと思ったのですが…
実は『硫黄島からの手紙』を見てまして
遅くなってしまって、更新できなくなりました。

ャバィね・・(-ω-;)、『硫黄島~』。
泣きながら見てました 。・゚・(ノД`)・゚・。

クリント・イーストウッドの才能が炸裂しまくり。
でも、ああいう映画をアメリカ人に作らせちゃだめだよ。
あれは、日本人が子々孫々にまで語り継がなくてはいけないものだろう。
しかし、残念ながらいまの日本人ではむずかしいんでしょうね。
ちょっとでも戦争を肯定するようなことを言えば、
『戦争を美化してる』と寄ってたかってたたきまくるんですから。
アメリカ人であるクリント・イーストウッドのほうが
当時の日本人の心情を理解しているという皮肉っていったい…。


そうそう、バンクーバーのメダル予想をうpしたとたん
アクセス数が馬鹿みたいに跳ね上がっているんですが…。

多くの方に見ていただけるのはうれしいのですが、
この予想はあくまでも推測の領域を出ませんので、本気になさりませんよう。
三橋貴明氏も「あたってはいないと思いますが」と前置きしてありますので。

さまざまな状況が選手を取り巻いていても、
最終的には選手自身の実力がメダルを決するものと思っております。
わたしたち、フィギュア・ファンは選手たちを黙って見守ってあげるしかない。
でも、今年の世界選手権のような選手の心を
かき乱すようなことにはなってもらいたくはないですよね。
落ち着いて、競技に集中できる環境を作って
あげるようにしてあげなければと思います。


また前置きが長くなってしまった…orz

早速本題に。

数日前に↓の動画を見ました。



8月14日に行われたアイスショーでのキム選手の演技です。

最初に見たときの感想は…

ガ━━(゚Д゚;)━━━ン!!!!!


これはかなり ャバィ・・(´Д`;) のでは?

キム選手がEXにまったく力を入れていないことはわかっています。
アイスショート自体に興味がなく、
「お金」のためだけにやっているということも承知です。
しかし、それにしてもこれはないでしょう。

彼女、エッジの矯正が上手くいってませんね、おそらく。

最初の3F-3Tがすっぽ抜けてしまっているし、
そして、次のルッツもわざわざサルコウに変えて跳んでいる。
これはエッジの矯正によって踏切が不安定になってしまい、
フリップどころかルッツも飛べなくなってしまっていることを
示唆しているような気が…。

もちろんたかがアイスショーですし、
競技レベルの高難度の内容を盛り込む必要はないわけで、
ルッツをやれないのではなく、
あえて得意なサルコウにしたのでしょうが、

しかし、キム選手はあまり器用な選手ではなく、
プログラムの内容をころころ変えて滑るというのは
彼女にとってはかえって難しいことのように思えるのです。

それに、少なくともフリップは跳ぼうとしてるんですし。
フリップが飛べなかったので、
とっさの判断でサルコウに切り替えたともいえるでしょうし。


そのサルコウにしても、いつもよりも回転に余裕がなく、
着氷してから回っています。いわゆる回転不足です。

昨シーズンあたりから、彼女、少しずつ回転に余裕がなくなってきて、
たびたび回転不足のまま降りてくることがあったんですよね。
その回転不足をジャッジは判定せず、
日本のフィギュアファンは怒っていたのですが。

これは、まあ、わたし的には理解できるんですよね。
競技はたくさんの選手が出場しますから、
よりスピーディーな対応が求められます。
ジャッジは次の競技者のためにも、早く判定を下さなければならない。

そして、キム選手は少なくともシニア・デビューをしたときから、
ジャンプの精度に定評がありましたから、
彼女のジャンプをよく見ないままに、
その何年かの評価の蓄積で判定してしまう。
つまり、キム・ヨナならば回転不足はないだろうと「勝手に」判断して
または、そう思い込んで判定してしまっている。

わたし個人としては、
巷で話題になっている「八百長」はないと思いますよ。
どちらかというと、ジャッジが思い込みだけで判定しているだけかと。

逆に、浅田選手はジャンプに独特の癖がありますし、
また3Aを女子で唯一跳ぶことができますから、
そのせいで、狙い撃ちされてしまったのかと。
事実、3Aに関しては最近まで回転不足やツーフットになりがちでしたし。

とにかく、彼女のジャンプが劣化していることは確かで、
その劣化を食い止められない状況にあることは間違いないようです。

また、プログラムをなかなかお披露目できないところも
そういうところにあるような気がします。

昨シーズンは、非常に忙しくて、
選手たちのオフシーズンの動きを見ていなかったのでわかりませんが、
でも、この時期にキム選手は新プログラムをお披露目していませんでしたっけ?
内容はしていなくても、曲目は発表していたような。。。

そのあたりはぜひ他の方から聞きたいのですが。

もちろん他の有力選手もまだ発表を控えていますし、
戦略的なものもあるので(キム陣営がいう「他の選手に内容を知られたくない」等)
プログラムを発表できない=キム選手の調子が悪い
とは断定できないのですが、
でも、何かが滞っていることは確かなような気がします。

《長くなってしまったので、二つに分けます》