2008/01/19

PICK UP:the cure その② 早速アルバムを聞いてみよう!

                   (1989年ごろのthe cureのメンバー)

では、早速自分の音楽傾向に合わせて、the cureのアルバムを聞いて見ましょう。
彼らは2004年現在まで計12枚のアルバムを出しています。
まずは古い順から紹介していきましょう。

①『three imaginary boys』(1979)(または『boy's do't cry』)
→bloc partyやフランツ、razor lightなどが好きなヒト向け。
 かなりpost-punkな作り。Fire in cairoは隠れた名曲。
 razorlightがカバーしたがったほど。なぜかエレポップ系(?)にも受けがよい。
 desitalismやmassive attack等がこぞってサンプリングに起用。
 シングル「boy's don't cry」は必聴。
 ちなみにヒラリー・スワンクがオスカーを取った
 映画『boy's do't cry』は同名曲からきている。

②『seventeen seconds』(1980)
→後期スマパン(『adore』以降),interpol,mogwaiが好きなヒトに。
 レディへの『bends』が好きなヒトでもいけるかもしれない。
 たぶんshe wants revengeやthe stillsなどのnew wave revival組は
 このアルバムを大いに参照したと思われる。
 ひどく内向的。a forestは名曲

③『faith』(1981)
→初期の大傑作。
 しかし、欧米の評論家の間では最も誤解されているアルバムでもある。
 joy divisionの『closer』のパクリだと勘違いされている。でも、
 まったく趣旨の異なるアルバム。『closer』が「死」についてのアルバムなら、
 このアルバムはまさに自身の「信仰」について歌ったもの。
 おそらくカトリック圏で最も評価の高いアルバムだと思われる。
 アルバム収録曲「all cats are grey」は
 ソフィア・コッポラ監督の『マリー・アントワネット』でも使用された。
 音楽評論家の小野島大さんが大絶賛しているアルバムでもある。
 post rock系にも通じるかもしれない。トータス辺りが好きなヒトならいけるかも。

④『pornography』(1982)
→NIN好きなヒトは必聴。KORNのfirstにも通じる暗さ。重々しさ。
 ロス・ロビンソンもkornのアルバムを製作するとき
 the cureを参照にしたと述べており、
 おそらくこのアルバムから引用したと思われる。
 このアルバムによって勝手にgoth系と決め付けられた。
 deftones,tool(a perfect circle)が好きなヒト向けかもしれない。
 ヘヴィ・ロック系でも特にダウナーなのが好きなヒトならいける。
 スマパンも「one hundred years」をライブでたびたびカバーしている。
 AFIは「hanging garden」をカバー。

⑤『top』(1984)
→ポップとダークの配分が絶妙。
 この辺りからcureの独自色が展開する。
 傾向はあまりないかも。強いて言えばスマパンとかかな~。
 『mellon collie~』期あたりの。
 文学作品からの引用も多数。
 サリンジャー、ディラン・トーマスを読んだことがある人なら
 ニンマリしてしまうかも。

⑤『the head on the door』(1985)
→初心者向け。the cureを初めて聞く人はこのアルバムから入ると良し。
 interpolのカルロスが絶対的におススメするアルバム。
 ブリット・ロックやnew wave revival系が好きなヒトなら必聴。
 raptureとかVHS or BETAとか好きなヒトならたまらないかも。
 あと、デンマークのバンドmewが好きなあなたなら、絶対好きになれる。
 ちなみにblink-182はpushという曲がお気に入り。

『kiss me,kiss me,kiss me』(1987)
→killersが好きならこれを聞け!的アルバム。
 killersはここから始まった(笑)。
 彼らがこのアルバムから引用したネタは数知れず。
 「the kiss」という曲は、incubusやaudioslaveがお気に入り。  
 audioslaveはライブでカバーしたことがあるらしい。
 museとかのscremo系でもいけるかも。
 ちなみに「just like heaven」は
 アメリカではemoのお手本曲として知られている。

『disintegration』(1989)
→欧米では彼らの最高傑作として知られている。
 特にアメリカではこのアルバムによってスタジアム・バンドとしての地位を確立した。
 当然アメリカのバンドはたいていこのアルバムが好き。
 リンプのフレッドは 「closedown」をitsのセレブリティ・リストに上げていた。
 jimmy eat worldはアルバム『futures』を
 製作したときにこのアルバムを聞いていたと思われる。
 激似な曲が多数(「23」など)。
 「disintegration」 というタイトルの曲があるぐらい(笑)。
 『bends』期のレディへやコールドプレイ、museが好きなヒトにおススメ。
 静かな感じ。
 ただし初心者向けではない。初めて聞く人にはただ眠いだけかも。
 
『wish』(1992)
→日本人ならこれを聞けでしょう。
 おそらく日本で最もウケるだろう音。メタル系が好きな人でもOK。
 むしろcureに対する偏見が消えていいかもしれない。
 音的にも最も聞きやすく、メジャー感が溢れている。
 cure独特のアクがほどよく消えて、苦手と思うヒトでも聞ける音。
 ちなみに「friday i'm in love」はスピッツが「群青」でパクッた。
 ラルクも「neo universe」で「high」より引用。
 邦楽系ロックバンドに多数ネタを引用されている。

『wild mood swings』(1996)
→欧米のファンの間でえらく評判の悪いアルバム。
 でも、決して駄作ではない。
 時代が彼らに追いついていなかっただけのこと。
 emoが好きな人なら絶対このアルバムを好きになれるはず。
 正当なほど、まっとうなemoアルバム。
 the get up kidsの青い感が分かる人なら絶対に分かるはず。
emoの黎明期と時期を同じくしているのが不思議。
 実は先見の明が彼らにはあるという証拠か。
 アルバム収録の「mint car」は名曲です。

『bloodflowers』(2000)
→グラミー賞にノミネートされたアルバム。
 受賞はなりませんでしたが(受賞したのは当然レディへ)。
 でも、いいアルバムだと思います。佳作に仕上がっている。
 長年のファンが非常に好むアルバム。
 音楽的にはどうだろうか。
 どのバンドが好きなヒトでもいけるとは思うけれども。
 けっこうマッタリめなんで、刺激的な音が欲しい人にはだめかも。
 個人的にはアルバム収録の「out of this world」がレディへに、
 「the loudest sound」がスマパンの曲に似ていると思う。
 少なくとも最初聞いたとき、スマパンのパクリバンドかと勘違いした。
 自分が初めてcureを知ったアルバム。

『the cure』(2004)
→あのヘヴィ・ロック界の大御所、
 ロス・ロビンソンをプロデューサーに迎えての満を持したセルフタイトルアルバム。
 これも往年のファンにはえらく嫌われているアルバム。
 cureのnew wave的世界観をぶち壊したと思われている。
 でも、かなりの傑作。
 cureファンとヘヴィ・ロックファンとは
 まったくかち合わないので、拒否反応が起きているだけ。
 個人的には非常に良い出来だと思う。
 ヘヴィ・ロックファンなら絶対におススメ。
 その辺のしょぼいヘヴィ・ロックバンドよりも絶対に刺激的な音。
 ヘヴィ・ロックが衰退しつつある中で、この音を提示できたのは立派。
 ロスにとっても代表的な仕事となったはず。
 やはりcure。ポップさとヘヴィな音との配分が絶妙。
 他のバンドでは出せない唯一無比の音。
 funeral for a friendやrapture,
 cooper temple closeなどの若手のバンドも大絶賛していた。
 80年代後半以降の生まれの人はここから入るといいかも。
 linkin parkにも似たヘヴィさ。ポップさ。


そのほかにもベストアルバム3枚に、
コンピレーションアルバム数枚とたくさんのアルバムを出しています。
まあ、正直なところ無難にベストアルバムから入って、
その音が好きになれたら
オリジナルアルバムを聞くべきかと思いますが、
ベストアルバムもたくさんあるので、
いちおう↓の『the greatest hits』を勧めておきます。
できれば、二枚組みになっているほうがよろしい。
アコースティック・バージョンも同時に収録されていて、こちらも秀逸です。
あわせて聞くのがよろしいかと。
オリジナルアルバムは日本盤で手に入れるのが困難かもしれません。
逆に輸入盤はフツーに手に入るので、
輸入盤でもいいという方は輸入盤を買ったほうがいいかも。
当然ITSでも全部のアルバムが買えます。
海外のITSに行くともっとシングルとかも買えるので
向こうのアカウントを持っている方は海外で買ったほうがいいかも。



もちろんDVDも多数販売されています。
ヴィデオも以前はけっこう販売されていたようなんですが、
ヴィデオは残念ながら廃盤のものが多いです。
ですが、DVDはライブ盤2枚とシングル集1枚が出ているので、
御覧になるのがいいと思います。
もちろんのちほどきちっと紹介したいと思います。

次回以降はthe cureのメンバーや歴史、
アルバム解説、DVD解説などをおこないたいと思います。

そろそろちゃんと紹介しよう~PICK UP:the cure~


ずっと以前から企画していたことなんですが、なかなか忙しくてまとまった時間が作れずにいたのですが、
幸い今日と明日は休日ということですし、この機会に一気に紹介しちゃいましょう。
幅広くUK/US ROCKを聞いているわたくしですが、
実は日本であまり紹介されていないバンドも数多くあり、
特に欧米では絶大な人気を誇っているにもかかわらず、
日本では無名というバンドがけっこうあったりします。
なぜそうなったのかはいろいろと理由があるとは思うのですが、
日本で紹介されていないというだけで、このまま聞かずに終わるのはもったいない!
このブログを読んでくださっている方にぜひ素晴らしい音楽を聴いてもらいたい!
ということで、PICK UPと称しまして、
日本では無名だけど、欧米では大御所なバンド」をいくつか紹介していきたいと思います。
第一回目のお題は「the cure」です。

the cure・・・。
このバンド名を知っているヒトはいったいどれだけいるでしょうか?
UK ROCKマニアの人でさえ、この名前は知らない。
正直、このバンドを知らずしてUK ROCKマニアと自称する資格なしだと思いますが、
洋楽を数多く聞いている人でさえ、彼らの名前を知らない。
逆に彼らの影響を受けたバンドはたくさん聞いているくせに。

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いたずらにバンドの名前を列挙しているわけじゃないですよ。
上に挙げたバンドがthe cureに影響を受けたと公言しているバンドなんです。
スゴイですよね。そうそうたる面々でしょ。殆ど有名バンドばかりです。
NINのトレント・レズナーはクロスビート誌で
僕のオールタイム・フェイヴァリット・アーティストはthe cure」と発言しておりましたし、
レディへのトム・ヨークは2004年のコーチェラ・フェスで彼らと競演したとき
僕はthe cureがいなかったらミュージシャンになっていなかった」とまで言っております。

ほかにどのバンドが彼らのことを評価しているかというと・・・
「暗く謎めいたところが魅力的だ」「音楽もルックスもアイコンにふさわしい」 Metallica
「心の中の孤独な部分に響いてくるんだ」 Good Charlotte
「あれほど注目されるバンドはいない」 Interpol
「伝説とよばれて当然だよ」 Papa Roach
「もじゃもじゃ頭に真っ白な顔 そして口紅」 Limp Bizkit
「時代を超えた音楽だ」 Green Day
「愛 失恋 絶望 幻想がテーマなんだ」 Linkin Park
「25年も第一線にいつづけているバンドは他にいない」 Lostprophets


それほどのバンドであるにもかかわらず、残念なことに日本ではまったく無名。
逆に欧米では大御所バンドとされて、ツアーはいつもスタジアムかアリーナでしかおこなわず、
新譜を出しても各国で必ずtop10入りさせるほどの安定したセールスを上げ(20年間も!)、
特に南米などのカトリック圏では暴動が起きるほどの熱狂で、
最近では東欧圏(特に正教圏)にまで人気が飛び火。
なぜかギリシアではあのレディへをおさえて人気バンドの一位に。
彼らの欧米での人気はとどまることを知りません。

日本でもようやく名前を聞かれるようになったというか、
去年、フジロックフェスティバルに初参戦。もちろんメインステージのトリを飾りました。
だけれども、彼らの知名度がこれで上がったとは思えません。
むしろ多くの偏見と誤解がまかり通っていたように思います。

どうしてこんな80'Sのバンドがフジに? 
40代のオヤジ世代を巻き込むために招聘した昔のバンドじゃない?
もう解散してるバンドなんでしょ? お金のために再結成して日本に来たんじゃないの? などなど

洋楽を聞いている輩の間ですら、そうなのですから、
洋楽を聞き始めた方には余計わけが分からなかったはず。
なかにはmuseを押さえてなぜこのバンドがトリなの? と思った方さえもいるはず。

ですが、このバンドは前述したように欧米では大御所。
あの伝説的フェス、グラストンベリー・フェスに計3回もトリで出演
2004年のコーチェラでも大トリをつとめております(ちなみに初日のトリはレディへ)。
本当ならフジだって欧米の基準でいけば、初日トリなんて絶対的にありえないはずなんです。
ですが、今回彼らのほうが譲歩して、日本に来てくれたんです。
1984年(わたしが生まれた年!)以来23ぶりの来日ということですから、
往年のファンにとっては喜びもまたひとしおだったでしょう。
もちろん、若くしてファンになったわたしも貴重な体験でした。

彼ら、見た目はかなりキツいですが(というかキモい?)、(上の写真参照)
ライブバンドとしても定評がありまして、非常に高い演奏能力と歌唱力を持っております。
こちらで見ることができます。フジでの彼らのライブです。

まあ、80年代から活動し続けているバンドということもあって、
見た目はかなり80'S的です。ある意味GOTHといえるのかもしれない。
しかし、GOTHと思って聞かないほうが身のためです。思わぬ痛手を負います。

で、これから聞く人、聞いてみようと思う人に忠告です。
まず見た目は無視しろ!
 →これが第一です。見た目はキツイです。ヤバいです。時代遅れです。でも、どこぞのV系と思って聞いた  ら罰があたります。あなたの想像を遥かに超える違う音です。ありえない。
とにかくアルバムは全部聞け!
 →基本、全部聞いたほうがいいです。どうしてかというと、実に音楽的に多彩なバンドだから。
  前述したバンドがその影響を公言していますが、見てみても音楽的にもまったく違うバンドばかり。
  多方面の音楽に影響を与えているといっていい。ヘヴィ・ロック、ポスト・ロック、emo。
  彼らのアルバムにはそれらが全て詰まっています。
一回であきらめるな!
 →聞いたら、聞き続けましょう。正直難解です。洋楽を聞き続けているヒトでも、キツいかもしれない。
  でも、あきらめずに忍耐強く、何度も聞きましょう。するめのようにかめばかむほど、味が分かる。
  これだけ多方面に影響を与え続けているということは、時代が彼らに追いついていないこともしばし       ばあるのです。聴けば聞くほど彼らの音のすごさが分かるよになるはずです。
ライブ盤を聞かずして語れない!
 →絶対一枚は聞いてみてください。you tubeで見てもいい。
  ファンの間でもライブ・バンドとして知られているので、たくさんUpされています。
  スタジオ・バージョンとは比べ物にならない凄まじさです。深遠にして重厚。演奏能力も高いです。
  ライブでしかやらない曲も多数。アレンジも多様。ファン泣かせです。

この4か条は守っていただきたい。
でも、このバンド、活動が長いです。来年で30年を迎えます。歴史も長い。
彼らの経てきた音楽的変遷も多種多様です。色んなタイプのバンドが影響を受けたものうなづける。
ですから、自分の好きな音楽傾向に沿って聞くのがベストです。
アルバムとその音楽傾向については次回に(かなり長くなっちゃったんで)。