2007/08/22

《フジロック初参戦記'07 その4》

その3の続き。

MUSE。そういえば最近あまり聞いてないな。
ファーストはすごく好きだったんだが、最高傑作と名高い「absolution」は思ったよりも好きにはなれなかったんだよな。
なんというのかな。感情過多というのか、とにかく評判だといわれるオペラティックな曲の展開が好きになれないのだ。あまりにも大げさすぎて、かえってしらけてしまうというか・・・。CUREやRADIOHEADが素晴らしいのは、単に感情を曲にこめるだけではなく、決して自己陶酔に陥ることのない、一歩手前のぎりぎりのところで踏みとどまっているクールさがあるからだ。MUSEにはそれがない。自己陶酔に終始している。これでは聞き手は疲れてしまう。日本人のように大仰な演出を好む人ならいいが、そうじゃない人は疲れる。QUEENとか好きな人なら大丈夫だろうな。あ、だから日本で人気があるのか。すごく納得。
前にはMUSETシャツを着た男の子が立ちはだかっている。
ああ、この子相当好きなんだなと実感する。自分もね、CURE死ぬほど好きだから、前で見たいという気持ち分かるよ。
年齢層は相当低め。20代の子達が中心。なかにはちらほらとCURETシャツを着ている子が・・・。うそ、この人たちも私と同じくCUREを待っているんだ・・・・。と変な親近感。年齢は20代か30代の人たちがほとんど。20代の子もいるというのは、彼らの人気の幅広さを物語っている。すごいね。
ミーハーな女の子が多いのかなと思ったけれども、けっこう男の子が多いことにびっくり。へええ、こういうUK憂鬱ギターバンドって女の子のファン率高いもんじゃない? なんかさ、ヴィジュアル系にはまれない文学系女の子が行き着くところがレディへとかMUSEとかのギターバンドだと思っていたけれども、男の子にも人気があるんだね。歌詞もいいって評判だけれども、どんな歌詞を書くんだろう?
家に帰ったらもっとちゃんと聞いてみようと思いつつ、MUSEの登場を待つ。
もうそろそろ予定の7時20分。おそらくライブは1時間ちょいで終了だから、その後は待ちに待ったCUREだと思いつつ、辛抱強く待ち続ける。
7時20分きっかり。まだライブははじまらない。サウンドチェックに時間がかかり、なかなかはじまらない。どうやら機材トラブルのようだ。何度もドラムのサウンドチェックをしている。
5分ぐらい押すかな、と思いつつも、不安な気持ちで待つ。だってロバはすごく気難しい人。こんなところでもたもたしてたら帰ってしまうかもしれない。MUSEは何度も来日してるからいいけど、CUREは23年ぶりの来日だからね・・・。
そんな不安をよそに、時間は刻一刻と過ぎてゆく。
5分、10分・・・ファンの子達も早く出てきて欲しいと何度も喚声を上げている。
その間わたしは別の不安に駆られて、思わず苛立ちの言葉を呟いてしまう。
隣の若い子が自分のほうを見る。
ごめんね、別にMUSEに恨みはないんだけれども、やっぱメインのCURE見たいから、MUSEには早く出てきて欲しいのよ・・・。
ロバ、機嫌損ねて帰っちゃう・・・。
いったいなにやってんのよ・・・。サウンドチェックはまだ続く・・・・。
もう既に時間は30分近く経過している。このままいったらアンコールもしてもらえない。やばい、早く出てきてくれ・・・!
そう思った瞬間、いきなりモッシュの波が!
とうとうMUSEの登場だ!
はっきりいって熱い、すごいステージ。観客がもうすごい。いっちゃってる子がほとんど。モッシュの嵐。すっげーな。こんなに盛り上がるんだ。でも、前列でCUREを見ようと待ち構えているCURE同世代の人たちは引いてるだろうな。
わたしももっとじっくり彼らを見たかったのに、これじゃあ見れないよともみくちゃにされながら、あれよあれよという間に前列へと押し出される。いつの間にか4列目に来ている。うそ、ラッキー。このままいったら最前列でCURE見れるかもしれない。
このつらい状況を幸運と思うことにし、ライブを楽しむことにする。
やばい。あんまり曲を知らない。
でも、すごくいいステージ。なんていうのかな、ホント観客を楽しませるコツを知っている。単に演奏能力が高いだけではなく、映像やら派手なパフォーマンスやらを駆使しながら、どこまでも観客を喜ばせるステージ。なんかすごいプロ意識を感じる。
マットは機材トラブルのせいで本気でキレていたっていうけれども、事実本当にキレていたのかもしれないけれども、彼はそれを逆手にとってきちんとパフォーマンスとして昇華している。その辺はすごくえらいと思う。
でも、前のKINGS OF LEONの時もそうだったけれども、似たような展開の曲ばかりなんだな。これじゃあファンじゃない子は飽きてしまうよ・・・。確かにたてノリのテンポのいい曲ばかりなんだが、時にはじっくりと聞かせる曲も入れて緩急をしっかりつけたほうがいい。
素晴らしいけれども、若い、青臭い感じのするステージ。
うーん、悪いけれどもCUREと格が違う。
彼らはMUSEと同じ年頃でもこういうステージはしなかった。確かにいいステージなんだけれども、ある意味典型的というか、ロックバンドにありがちなパフォーマンスなんだな。
確かに見た目が派手なほうが、若い子たちには分かりやすいし、かっこいいと思われやすい。逆にCUREのようにまったく動かないパフォーマンスは、ロックに破壊衝動を求めている子達からすればつまらなく映る。
だけれども、音楽の本質って本当にそういうところにあるのだろうか。
音楽というのは見た目の派手さだけではなく、耳で聞いて感動するものではないだろうか。
そういう点ではマットのボーカルにはまだまだ未熟さが残るし、彼らのプレイの荒っぽさにもまだ改善点はある。MUSEはロックの本質を突いているかもしれないけれども、CUREは音楽の本質を突いているような気がする。この違いがさまざまなアーティストを惹きつける原因になっているんじゃないかな。
いや、まだまだ発展途上のバンドってことです。
でも、その一方で信じられないほど素晴らしいパフォーマンスをしたことは事実。正直MUSEが終わり、ぞろぞろと若い子たちが帰ってゆくなかで、CUREが果たして彼らを上回るプレイができるのかと不安に思いましたよ。おそらくあの現場にいた子達たちのなかにも、MUSEが実質のトリだと感じていた子も多いはず。
ねえ、あんなプレイをされて、ロバ、大丈夫~? 
と、かなりの不安に陥る。
ようやくMUSEが終わって、ようやくオオトリ(わたしにとっては)CUREの出番。
モッシュの洗礼から解放されて、からだはびっしょり。すでに体力の3分の2を消耗。
やばい、CURE開演までまだ一時間もある。からだもつだろうかと心配になる。
ぞろぞろとMUSEファンが去ってゆくなかで、前列を確保しなければといそいそと前方へと移動する。
最前列から二列目。
よっしゃあ、超いい位置だ。だが、前にアメリカ人らしき白人男性が・・・。異常に背が高い。視界をさえぎりまくり。これじゃあロバが見えんと焦る。
と同時に、海外での人気の高さを思い知らされる。周りを見渡してみると、外人率高し。すげえな。CUREってやっぱり海外じゃビッグアーティストなんだな。アルゼンチン人らしき人が旗を持って待機している。
うーん、MUSEでもなかった展開。すごいね。
前列にいたCURE待ちの子と話をする。MUSEきつかったねえと会話。
汗びっしょりだよ・・・。
確かにメイクもほどこして準備万全だったのに。メイクはすっかり落ちてほぼすっぴんになってしまってる。これじゃあロバに顔見せらんないよとわけのわからんことで焦る。
いったい何を考えているんだか・・・。
バックになぜかNEW ORDERの音楽がかかっている。MUSEのときもそうだったが。主催者の趣味なのか? それともロバの趣味? いや、ロバとNEW ORDERは犬猿の仲でしょう。近親憎悪ともいうが・・・。しかし、「regret」や「spooky」は名曲なのでいいこととしよう。NEW ORDERの曲を口ずさみながら、開演を待つこととする。
その間にも、ツアー・スタッフがやってきていそいそと準備をしてゆく。まずJASONのドラムセットが運ばれ、そのあと、SIMONのベースが並べられる。前方では一人のスタッフが12弦ギターをチューニングしてる。
うそ、ロバ、アコギ弾くの? 
思わぬ発見に喜ぶ自分。最近「ultraCURE」ギターが発売されたせいで、他のギターをめっきり演奏しなくなってしまったロバ。
ロバの6弦ベースを愛するわたしとしては少々つらいのだが・・・。
やっぱ「pictures of you」は6弦ベースでしょ。あのチェロに近い深みのある、重厚な旋律があってこそ、あの曲の美しさが引き立つというもの。それをロバスミ・モデルのギターで弾かれてもねえ。
だから12弦ギターを見たとき、もしかしたら「just like heaven」はこのギターでやってくれるのかもしれないと思わぬ期待に胸が膨らむ。
すげー、やっぱ「just like heaven」はアコギだよね。
最前列を占める観客のわきをぬって、セットの写真をデジカメで撮る。
うううっ。撮れない。
撮れないよーとか呟いてると、前の白人の男性がスペースを空けてくれた。
ありがとうといって写真を撮る。うん、記念にとっておこう。
時間はまだ9時10分ほど。
振り向いてモッシュピットの外側を見る。
思ったよりも人の入りが多い。
MUSEが終わったころの閑散ぶりを考えたら、考えられないほどの人数。
隣にいたCUREファンが、モッシュピット内に残っているオーディエンスの数の少なさに、「ロバート、もう日本に来ないかもしれない」と嘆いていたけれども、わたしはもとから日本のCURE人気の低さは知っていたから、客の入りは少ないだろうなと別に気にもしていなかった。
だが、この人の多さはなんだろう。しかも、周りの子達はみな20代の、きっと初来日したときは生まれていなかったか、まだ子供だったかぐらいの若い子達ばっかり。逆にリアルタイマーのオールドファンがいないことに驚く。おそらくモッシュピットのなかに入って若い子達と一緒に騒ぐだけの気力がないせいなのかもしれないけれども、客層の若さにはびっくり。
この子たち、本当にCUREのこと知ってんのかな~?
そう思ってしまう。きっと、さんざんメディアで伝説のバンドの23年ぶりの来日を宣伝してたから、興味本位で見に来た観客が多いんだろうな。
でも、なかには本当に熱心なファンもいて、すでにCUREのTシャツを着ている。
今年のアジア・オーストラリアツアーのTシャツだ。
きっとネットとかで買ったんだろうな。
わたしも熱心なファンのひとりだけれども、残念ながら彼らのTシャツを着てまでライブを見ようとは思わない。
なぜかは分からないけれども。
空を見ると、少し雲が出て空が翳っている。月が雲に隠れかかっている。
もしかしたら雨が降るかもと思いつつも、それほど雲に覆われているわけではないので、おそらくライブの途中で降りはしないだろう。というか、降らないで欲しい。
ステージではツアースタッフが機材を一生懸命は混んだり、サウンドチェックをしたりしている。スタッフの一人がうえの照明によじ登ってなにやらしている。
おいおい、怖いって。その光景に焦りながらも、いよいよ彼らが登場するんだと胸を躍らせる。
赤やみどり、紫などの色とりどりの照明が明滅する。
MUSEとはちがい、非常にシンプルなステージだ。すごくCUREらしくていい。てか、you tubeやDVDでさんざん見てきたステージと一緒。
本当に彼らがここでステージをやるんだという思いで胸が熱くなる。
隣のファンの子と少しだけ話をする。
「本当に生ロバスミを見れるんだね~」
帽子の可愛い、ちょっとゴスっぽいいでたちの子がそういった。
そうなんだ、本当にここにロバが現れるんだ~。すげー、すげーよ。
大画面に、フジロックのロゴに続いて、「THE CURE」のロゴが現れる。
狂喜乱舞して、デジカメに映像を納めようとするも、なかなかうまくいかない。
最初は失敗してしまった。
もう一度とろうとするも、なかなか画面にロゴが出てこない。
再び画面に出てくるのを待つことにする。
おそらく画面にロゴが出るということは、開演時間がせまっているんだろう。
携帯の時計を見る9時30分。
うううっ。MUSEのことがなければいまごろ開演しているのにぃぃぃぃ。
こんなに時間が押してしまって大丈夫だろうか。と不安になる。
CUREは基本的に演奏時間が長い。最低でも2時間半は演奏する。しかし、主催者が彼らに与えた時間はたったの90分だけ。
ロバートはそれを不満に思ったのか、わざわざ自分のサイトに90分しか持ち時間がもらえなかったと書いていたが、個人的には2時間半のステージをやると思っている。
2ちゃんとかでもやらないんじゃないかと書き込みされていたにもかかわらず、わたしは必ずやると確信している。
なぜってそれがCUREだから。それがロバートだと思うから。
でも、こんなに遅い開演時間じゃやらないかもしれない。だってどう考えたって10時からでしょ? 2時間半やったら12時過ぎるよ。大丈夫かなあ~。いくらなんでもこんな遅い時間までやらないんじゃないか? 彼ら?
わたしとしては絶対に海外のフェスと同じように、2時間半のフルセットで演奏して欲しい。23年間も日本に来ないで、たった90分で終わってしまうのはやだ。あれもこれもとやって欲しい曲は一杯あるのに、その半分もやらないで終わってしまったら、くそー、悶死するぞ! 
画面に再びロゴが現れる。
急いでカメラを構えるが、結局うまく撮れなかった。でも、まあ、いいや。とりあえず、「cure」って文字は撮れたもんね。
からだが少しだけ冷えてくる。やっぱり苗場の夜は寒いのかもしれない。しかし、周りにひしめく人の熱気で不思議と寒さは感じない。
もう少しあともう少し。